戦没学生の手記から 一 [昭和]
手折りたる 土筆なつかし 故郷の 妹がつみしも 同じこの季節
叱られて 土掘る兵は 愛(かな)しけれ 世にある時の 姿想へば
山岸久雄
この朝け 遺言状など 書きをりし 戦友なりしかな 泪にじみ来
竹村孝一
消ゆべきは 跡なく消えて 夜の海に 巨大空母は ひた燃えさかる
デング熱に 身体痛めば 苦しさに つい名を呼びぬ 椰子を打つ風
榊原大三
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「きけ わだつみのこえ」からだそうだ。三人とも東京帝国大学だった。
病気で内地送還となっても陸軍病院で亡くなったり、中国の華中での戦死、
パラオペリリュウ島での戦死だった。
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きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記 (岩波文庫 青 157-1)
p266